プリンで一息つきながら、原油安についてあれこれ………

 ガソリン価格が110円台で推移している。新型コロナウイルス感染症の影響で世界的に景気が減速し、原油余りがおきているからであろう。国内外で飛行機の運航は大幅に減便され、県内外への移動は自粛状態、サプライチェーンの寸断や需要の減退で製造業も減速等、経済活動は停滞している。原油は野菜などと同じように「モノ」であるため、基本的には需要と供給の関係によって値段が決まる。であれば、産油国が減産をして原油価格の安定化に向かえばよいのだが、産油国の思惑はいろいろであり、今の国際社会の現状では産油国の足並みをそろえるのは難しい状況である。例えば、ロシアは経済のおよそ6割をエネルギー資源に頼っているので、減産・原油価格の低下はプーチン政権にとっての痛手であろう。ロシアの軍事力によるクリミア併合(ウクライナ領クリミア半島をロシア人保護を口実として併合)は、依然として大半の国からの叱責を買い、米欧主導の経済制裁と相まって、ロシア市民の不満は高まるばかりである。アメリカはシェール革命(地下深くのシェール層に水圧をかけヒビを入れて中の石油・ガスを取り出すので、環境への負荷が大きいといわれている)で一躍世界一位の原油生産量を有する産油国となっているが、採掘に要するコスト高のため、原油価格の低下は価格競争になると手痛い。

  原油価格の代表的な指標には、米国産のWTI(西テキサス地域)、欧州産の北海ブレント、中東産のドバイ原油がある。日本はおよそ85%の原油を中東から輸入しておりドバイ原油価格が指標となっている。では1リットル当たりの原油価格はいくらであろう。 原油価格は1バレル(barrel:樽)あたりの価格(ドル)で取引されている。1バレルは159リットルであり、5月28日の取引の中心となる7月渡しは1バレル33ドル前後で推移している。今朝(5月28日)の為替相場は1ドルおよそ107円であった。 33(ドル)÷159(リットル)=0.207(ドル)  0.207(ドル)×107(円)=22.20(円)  1リットルおよそ22円での原油取引ということになる。日本では約半分は税金(米国は1割程度)であり、ほかに輸送コスト、精錬、保険、流通ルートでの儲け等にかかる経費を鑑みて、消費者はガソリン1リットルをおよそ115円で購入しているということになる。 原油は世界中で大量に取引される国際商品であるため、為替相場の動向の影響を受けるので、円高である現在(5月28日はおよそ107円))では、これもガソリン安の要因となっている(円安となればより高い値段で輸入することになるため、ガソリン価格は値上がりする)。

 ガソリン価格ばかりでなく、コーヒー豆、キウイフルーツ、スペインのブランド豚であるイベリコ豚肉などなど、スーパーマーケットに鎮座している商品群は日本と世界各国との関係性(経済ばかりでなく、輸出国の事情や価格形成の仕組みなど)を読み取るのに格好の教材である。コーヒー豆はブラジルの中央部一帯に広がるセラード地帯(日本の国土の5,5倍の面積で、かつては不毛の地と称されていた)の土地改良によって大幅な生産量の増大に伴い日本にもセラードブランドで大量に輸入されている。キウイフルーツはニュージーランドとのTPP11(環太平洋パートーナーシップ協定)発効により、関税6.4%が撤廃され輸入が拡大している。イベリコ豚はEUとの経済連携協定によって関税がおよそ2%削減され輸入が増大しているので、よくお目にかかるようになっている。このほかにもメキシコ産アボカド、チリ産のサーモンなど、身の回りの農畜産物の存在が地理的な距離を縮めていることを実感させる。今回の感染症の世界的な広がりもグーローバル・ディスタンスの縮小を知らしめているが、この重大な局面において、今こそ世界のリーダーたちの叡智が試されているときであろう。世界市民の一員としてのわれわれの自覚は言うまでもないが。 

英語&教養講座の生涯学習「まなびの広場」

ANAで勤務した後、結婚、子育てしながらの専業主婦から一念発起し英語の勉強を始めました。テンプル大学日本校の大学院で英語教育を修了した後、英国のエセックス大学大学院で社会学を修了しました。宮崎市に教室を開設しております。小学5・6年生、中・高生からシルバー世代まで対象の教室です。基礎英語から時事英語、社会を見る眼が養われる教養講座を開講しております。詳細はブログで随時紹介しております。

0コメント

  • 1000 / 1000