『桃子さん』ありがとう!;『おらおらでひとりいぐも』から
『おらおらでひとりいぐも』は第158回芥川賞を受賞された、若竹千佐子さんの小説です。55歳から主婦業の傍ら小説講座に通いはじめ、史上最年長となる63歳で受賞されました。桃子さんはこの小説の主人公であり、75歳の設定になっています。めったに小説を読まない私が(あわただしい毎日が小説を読むことへの心理的バリアになっているのか、小説への関心が低いかのいずれかですが)一晩で一気読みしたほどの『桃子さん』との一体感。桃子さんを通して「老いて孤独という時間こそが、自分との対話の時となり、自分を生きるにつながっていく」若竹さんの筆力に、若竹さんご本人の偉大さに、久しぶりの感動をさせてもらいました。やっぱり文学は、本は、文字を読むことは、われわれの心を振動させてくれるものだと思いました。「文学は何の役に立つのか?」という問いに対して「今の世の中で正気を保つため」と平野啓一郎と答えているそうです。文学には読んでいるときの他者への共感と、読後に読者同士がより自由に、より寛大に共感し合う効果があるというのがその理由だそうです(朝日新聞 「論壇時評」2020年3月26日より抜粋)。携帯の画面で、ネット上で、SNSで断片的に交わされている情報社会であればこそ、やっぱり文章を読むことで人間が人間でいられるのではないかと思いました。われわれはサルでもロボットでもないのだから。
話題は変わりますが、生涯学習「女性のための学びの広場」を開設し、個人的に充実した日々を送っておりますが、どうも事務所の前を道行く人の関心が今一つ。そこでコラムを週替わりで事務所の前に立てかけております。第一回目のコラムをご紹介します。
学びの広場ミニコラム(1) 新型コロナウイルスは社会の経済的基盤を揺るがしているばかりでなく、消費マインドの縮小も招いています。さらに人々の不安を掻き立て、いつもなら山積みされているトイレットペーパーが姿を消し、マスクを購入しようにも品切れ状態です。自己にとっての最善の合理的選択(モノがあるうちに買いだめておこう、そのほうが安心だから)が社会にとっての大きな損失になることもあります。これを社会的ジレンマといいます。
共有地の悲劇:100人の村では全員が牛を飼っており、共有の牧草地に放牧している。この牧草地はそれほど広くないので1人1頭しか放してはいけない。放牧される牛が100頭以内なら1頭当たり100万円の利益を得られるが、それ以上の放牧になると、牧草が減り、共有地が荒廃し、結局、牛の肉質が下がり価格も下がる。ルール違反者が1人出るごとに(1人で2頭の牛を飼う)牛の価格が1万円づつ下がる。例えば10人の違反者がいたら牛の価格は90万に下がり、ルールを守って1頭しか飼わなかった村人の得る利益は10万の減、70人の違反者になると牛1頭が30万になり、違反者の利益も60万にしかならない。こうして全村人が目先の利益を高めようと行動したら利益は0円。全員がルールを守っていれば100万円の利益が得られていただろうに。
ティッシュペーパーがなくなりかけてきたので、スーパーに行ってみました。いつもなら5箱で250円ほどのティッシュが350円になっていました。われわれが協力行動を選択したほうが社会にとっての利益は大きいはずですが、自己の利益を高めるための選択の結果、すべての人がかえって損をしてしまうということです。しかしながら、われわれは他者からの承認欲求もあるので、むしろ利他的行動を選択し、それが社会を変える方向に動くということになればと思います。 みなさまに、読んでいただければ幸いです。
4月の教養講座にもご関心を頂ければと思います。
4月の教養講座 テーマ①:脳活してみませんか「時事英語入門講座」
簡単な英文記事を読んでみます。仕上げはアナウンサーになったつもりで音読もしてみましょう。 記事の背景にある社会的解説もします。一石二鳥の楽習講座です。
日時:毎週月曜日 午前10時から二時間程度 参加費:1500円 (茶菓・資料代込)
テーマ②:遊び心で社会学入門 「基準値はどうやって決められているのだろう」
メタボから放射性物質、賞味期限等その基準となる数値の根拠に迫ってみたいと思います。その根拠を知ることで、意思決定のしくみを知ることになるかもしれません。
日時:4月16日(木)or 18日(土) 午前9時半~11時半
*両日とも同じ内容ですので、どちらかの日にご参加ください。
参加費:1500円 (茶菓・資料代込)
申し込み先:090-8761-3437
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