気候変動は待ったなし!グレタ・トゥーンベリさん(16歳)に学ぶ行動学
南米ブラジルは、ボルソナーロ大統領のアマゾン政策(環境保護より開発による景気回復)によって、違法伐採や放火による土地占有が横行し、大火に見舞われている。またインドネシアの森林火災による大気汚染の現状や、世界各地で報告されている異常気象による甚大な被害は、確実に、地球環境の悪化の進行をわれわれに突き付けているが、地球市民の一人としての自覚よりも傍観者となっている自分がもどかしい。
スウェーデンの16歳の女の子、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんは、2018年8月、学校を休んでスウェーデン議会の前でたった一人で3週間の座り込みを敢行した。昨年のスウェーデンの夏は統計がとられてから262年間でもっとも暑い夏となり、山火事や熱波で多くの犠牲者が出たそうだ。グレタさんの座り込みは、一か月後の9月に予定されていたスウェーデンの総選挙に向けて、気候危機を訴えるのが目的で、効果的な温暖化対策をとらない大人たちへの抗議行動であった。今ではオーストリア、ベルギー、スイス、ドイツなどで生徒たちが賛同し、座り込みはかなりの規模に膨れ上がっっている。グレタさんは座り込みをしている間に、温暖化関連の本を三冊読んだとのこと。「学校はここよ」と、いろんなメッセージを発している16歳の少女から学ぶことは多い。
Following Sweden’s hottest summer ever, Greta Thunberg decided to go on school strike at the parliament to get politicians to act. “I am doing this because nobody else is doing anything. It is my moral responsibility to do what I can,” she says. “I want the politicians to prioritize the climate question, focus on the climate and treat it like a crisis.” When people tell her she should be at school, she points to the textbooks in her satchel. “I have my books here,” she says. (https://www.theguardian.com/science/2018/sep/01/swedish-15-year-old-cutting-class-to-fight-the-climate-crisis)
ニューヨークとチリで行われる国連の気候変動会議に出席するため、飛行機を使わず、CO2排出量がゼロのヨットでの15日間の大西洋4800キロの旅を終えてニューヨークに到着したグレタさん。グレタさんは自閉症の一種であるアスペルガー症候群、BBCの取材に、この症状で「枠にとらわれずに物事を見られるようになった。他のみんなと同じだったら、学校ストも始めなかったかもしれない」と話したそうである。グレタさんはその後、国際会議や世界経済フォーラムにも招待されているが、温暖化への加担を最小化するため、スウェーデンから列車でそれぞれの街に向かったそうである。そして、いずれの会場でも「大人たちの不作為」を指摘し、会議に踊る人々に冷徹な一瞥を向けたとのこと。 (http://rief-jp.org/ct8/87084)
さて、一般的にわれわれは「自分一人が行動したって、他の76億人が行動しなければ、何の違いも生み出さない」とがっかりするような結論に至る。しかしながら、グレタさんの取った行動は、気候変動に対する取り組みの真摯な姿勢と道徳的責任をわれわれに投げかけてくれた。プリンストン大学教授で応用倫理学の研究者であるピーター・シンガーの比喩の引用であるが、「時速制限のある商店街の道路をかなりのスピードで走っていくドライバー、でも心配しないで、だれも犠牲になることはないから」。われわれの行動の自由の権利は他者に危害を加えない限り許される、という「新自由主義的な考え方」がわれわれの環境行動にも影響を及ぼしているとしたらどうであろう。
近代社会が勝ち得た「自由」の権利であるが、経済理論の「新自由主義」で説明するならば、個人や企業の経済活動の自由を掲げ、そのために政府や労働組合などの介入や制約を排し、民営化や規制緩和等による自由な競争市場を目指すという競争社会、弱者に対する自己責任論的な、迷惑さえかけなければという「自由」の選択的考えが、社会にはびこっているとしたらどうであろうか。
ではなぜ、グレタさんの行動は賛同者が増えているのであろうか。よく言われているが、われわれは他者のとる行動によって影響される。たとえ、影響されないと思っていても。われわれは自分で決定していると思っていても、案外どのようにふるまえばよいのか、他者の行動を手引きにするのかもしれない。情報を発信するのも社会を変える一つの方法であるかもしれないが、行動して見せることで、他者への影響力は確実なものとなるのではなかろうか。16歳の少女グレタさんは実に多くのことを教えてくれていると思う。
このブログは生涯学習「女性のための学びの広場」の情報発信の一つの「場」であるが、情報空間ではなく、物理的な「場」を開設する運びとなった。宮崎市一宮交差点南のすぐそばに11月に開講する予定であるが、社会的に必要とされる課題についての「学習の場」になればとの信念conviction(言葉が重くて恐縮ですが)からである。雇用されるのも一つの働き方であるが、雇用を自ら創出するという大胆な決断に至った。働き方改革、高齢者の雇用、生涯学習と三本の柱に支えられての出航であるが、星座に導かれながら、残りの人生を心地よく航海できればと願っている。 参考図書:中野晃一 『右傾化する日本政治』 岩波新書 参考資料:(https://www.theguardian.com/science/2018/sep/01/swedish-15-year-old-cutting-class-to-fight-the-climate-crisis) http://rief-jp.org/ct8/87084
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