「教養とは」を問うてみる

 インターネットをgoogleすれば、なんでも情報がすぐに手に入る。私の最近の出来事を例にとると、カリフォルニア・ディズニーランド・パークの旅行計画を立てているが、テーマパークのmapが欲しい、日々のイベントスケジュールが知りたい、混雑状況を知りたいなどなど、すぐにgoogleで解決できる。https://disneyland.disney.go.com/ 11月1日に行くとなるとハロウィーン(10月31日)の翌日であるが、果たしてオープンしているのだろかと。そこでGeneral Disneyland Resort Informationにメールで問い合わせ(英文ですが)をしてみると、すぐに丁寧な返信が届く。最初の部分だけですが、こんな具合に。

 Thank you for your email to the Disneyland® Resort in Anaheim, California! We are happy to hear that you are planning an upcoming visit to The Happiest Place on Earth! The Disneyland® Resort Theme Parks (Disneyland Park® and Disney California Adventure® Park) are open every day, including all major holidays. The last Oogie Boogie Bash – A Disney Halloween Party will be on Halloween, so the posted Park Hours online will be the most up-to-date. Our park hours and refurbishment schedule are posted online about 6 weeks in advance and park entertainment schedules are generally posted about 1 month in advance. 

というわけで、Oogie Boogie Bashの盛大なるハロウィーンイベントの翌日もオープンしていることが分かりホッとしている。しかも6週間前にはオンラインで時間帯やスケジュールが最新のものに更新されるとのこと。

  情報技術の発達はわれわれの生活を便利にしてくれる反面、辛抱強く考えたり、どうにかこうにか工夫しながら問題解決しようとする努力のプロセスを必要としない状況にわれわれを置く。短時間で効率よく解を得ようとする行動が日常化されると、とことん考えて判断しようとすることを回避し、いい加減な状況判断をしたり、直感的判断に委ねることもしばしばである。直感はすぐれた判断をする場合もあるが、バイアスやエラーを犯してしまう傾向がある(心理学者にしてノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンによる)。

  さてここで問題です。 

 (問題1)夜、一台のタクシーがひき逃げをしました。この町では、緑タクシーと青タクシーの二社、合計100台のタクシーが営業しています。青色のタクシーは10台、緑色のタクシーは90台です。一人の目撃証言によると、タクシーは青だったとのことです。夜間に青色か緑色かを正しく判断できる確率は80%、見間違う確率は20%です。さて、あなたは「青色のタクシーがひき逃げを起こした」という目撃証言が正しい確率をどの程度に見積もりますか。 Aさん Bさん Cさん…………「80%だとおもう」。しかし、目撃者がいなければ青色のタクシーである確率は10%ですよね。さて、それでは論理的に考えてみましょう。

  青色を正しく青色と判断する可能性は10台×80%=8台 

 緑色を誤って青色と判断する可能性は90台×20%=18台 

したがって、確実に「青色である」と証言できるのは8台+18台=26台のうちの8台である(確率の計算式をおさらいすると:Aがおきる確率=Aがおきる場合の数÷すべての場合の数)ので、8÷26=0.30769…………およそ30%となります。ここでは二つの情報が提示してありますので(青色と緑色の車の台数と夜間に識別できる確率)、提示された情報を丁寧に読み解く粘り強さが求められると思います。詰めて考えていく、思考のプロセスが楽しめるような訓練が試されます。

  次の問題は検査結果についての問題です。健康診断を受けてみると陽性反応が出て、「○○の割合で陽性反応が出て、○○%の方が手術ができ、成功の確率は○○%で云々」と、なると、その状況をなかなか冷静に処理できないといった経験はありませんか。 

 (問題2)A国では、男性10万人に100人の割合(0.1%)である難病に感染している。ある男性がその難病の検査をしたところ、陽性反応が出て、彼は大変ショックを受けた。なお、検査では、感染をしていると98%の確率で陽性反応が出るが、感染をしていなくても1%の確率で陽性反応が出る。さて、この男性が感染者であるという確率はどの程度だと見積もりますか。 Aさん Bさん Cさん…………「ほぼ間違いなく感染している」と多くの人が答えるのではないでしょうか。だって、「感染をしていると98%の確率で陽性反応が出る」だから。さて、それでは論理的に考えてみましょう。

  陽性を正しく陽性と判断する可能性:100人×98%=98人 

 陰性を誤って陽性と判断する可能性:99,900人×1%=999人 

確率の計算式は、Aがおきる確率=Aがおきる場合の数÷すべての場合の数であるので、98を98+999=1097で割ると、98÷1097=8.9% この男性が感染者であるという確率はおよそ1割!!!!!難しいですね。なんだか、キツネにつままれたような気がします。A国ではほんの一握りの男性しか感染していないという事実よりも、「感染をしていると98%の確率で陽性反応が出る」という情報に引きずられ、「感染をしていなくても1%の確率で陽性反応が出る」すなわち1000人の男性は陰性でも陽性反応が出るという情報への配慮不足だったようです。過剰に反応せず、冷静に、論理的に考える思考回路は養っておきたいものです。

  第三回のブログ、「論理的に考える」を問うてみるで、ご紹介しましたが、新井先生曰く「読解力や論理的思考の発達は、高校生やそこらの年齢で止まってしまうことはない。いくつになっても成長できるというのが私の仮説です」。メディアや情報源のわからないメッセージに踊らされずに、論理的に考えていく力を養っていくことで、社会はいい方向に向かっていくかもしれません(言いすぎでしょうか)。「教養とは」このような論理的思考回路をコツコツと磨いていくことかもしれません。

 参考図書:一橋大学経済学部編 『教養としての経済学』有斐閣 *問題1.2はここから出題      ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』上 早川書房 *問題1の参照 

予告:10月5日(土曜日)の午前9時半から11時まで「女性のための学びの広場」を開催予定です。テーマはノーベル経済学賞受賞者であるダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー:あなたの意志はどのように決まるか』を参考にしながらの講座にしたいと考えております。ご興味のある方は10月1日までにご連絡ください。年齢は問いませんが、女性に限らせていただきます。場所等に関しては検討中です(宮崎市内です)。参加ご希望の方はお名前と御年齢○○代をお知らせください。

 メールアドレス:manandeoizu810@gmail.com

英語&教養講座の生涯学習「まなびの広場」

ANAで勤務した後、結婚、子育てしながらの専業主婦から一念発起し英語の勉強を始めました。テンプル大学日本校の大学院で英語教育を修了した後、英国のエセックス大学大学院で社会学を修了しました。宮崎市に教室を開設しております。小学5・6年生、中・高生からシルバー世代まで対象の教室です。基礎英語から時事英語、社会を見る眼が養われる教養講座を開講しております。詳細はブログで随時紹介しております。

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