新米をほおばりながら...比較優位について
国民一人当たりのコメの消費量は118.3キロ(1962年)からおよそ50年間で54.4キロ(2016年)にまで減少している。当時の人口は9583万人、2016年は1億2700万人であり、およそ3000万人の人口増にもかかわらずのコメ消費の減少である。食生活の欧米化や産業構造の変化、人口動態の変化、スリム指向などその要因は様々であろう。茶わん1杯のごはんを炊く前のお米(精米)の重さはおよそ 65g 、 5㎏の精米であれば約 77杯分になるので、 2,040円(小売価格の平均)のお米を買ってごはんを炊いた場合、 1杯当たりのお米の値段は 約26円 となる。おコメってとても経済的な主食と言えよう。平成31年1月の一世帯当たりのひと月の米の消費は3100グラム、パンは44534グラム、金額にすると米は1490円、パンは2534円となっている。パンもいいけど、もっとおコメを食べてコメ農家を応援したくなるのは私だけであろうか。
外国からの輸入米に押されないように、コメを輸入する場合、日本は重量に応じて課税する仕組みを採っており、1キロ当たり341円課税してコメ農家を保護しているが、やはり家庭でのコメの消費量を増やしていくことが農家を守ることにつながるのではなかろうかと、国内のコメ消費の減少を考えると「もっとおコメを食べよう」と応援したくなる。 日本のコメ価格は外国米に高い関税をかけることで守られている一方、政府は価格維持(価格を維持しつつ農家を守る)のために補助金をつけて家畜のエサとなる飼料用米への転作を誘導している。平成29年度の水稲作付面性160万㌶のうち主食用は137万㌶であり、飼料用は14.3万㌶と、年々増加しており、毎年3千億円規模の補助金が当てられている。
イギリスの経済学者デヴィッド・リカードが発見した、貿易の大原理ともいうべき「比較優位」という考え方がある。これは、自国にとって優位なモノは自国で生産し、相手国にとっての優位なモノは相手国に任せることで、どちらの国も比較優位なモノの生産量を上げることができるという貿易理論である。当然のことながら日本はコメの生産性においてアメリカや東南アジアの諸国には勝ち目はないが、高品質のコメの生産であれば比較優位の理論が適応できるのではなかろうか。有機米や低農薬米など「高品質」で勝負し、これから拡大するであろう東南アジアやインドなどの富裕層をターゲットに、そして「日本のコメ文化の復活」に向けて、われわれの消費拡大で、国民全体の利益拡大になればと、新米をほおばりながら考えた。
こぼれ話;アインシュタインは秘書よりずっと早くタイプを打てたそうである。しかし人間には持ち時間が限られている。アインシュタインが研究に専念するにはタイプを秘書に任せることでさらに研究に打ち込める。この場合秘書はアインシュタインと比してタイプに比較優位を持っている。人は比較的得意な分野を持つことによって比較優位に立つチャンスがつかめるとも言えませんか。
参考資料:農林水産省ホームページ
松井彰彦『市場って何だろう』ちくまプリマー新書 2018年
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